時の羅針盤・195

時の羅針盤・195

心から始める

高橋佳子


新型コロナウイルスという呼びかけの時代

新型コロナウイルス感染による緊急事態宣言は、私たちの生活を大きく変えることになりました。人々の行動には制限が加わり、不要不急の外出、県境をまたぐ移動、社会全体を支える経済活動と言える企業活動や店舗営業も自粛を余儀なくされました。週末の閑散とした街の様子はこれまでとはまったく異なる景色で、5月のゴールデンウイークも例年とは打って変わり、静かな日々へと変貌しました。

そして、医学的常識をことごとく覆すような新型コロナウイルスが私たち人間に与えた影響は、そうした生活の変化だけではありません。

新型コロナウイルスは、私たち人間に大きな呼びかけを投げかけています。中でも、人間を人間たらしめてきた営み──多くの生産活動や経済活動に対する呼びかけは、私たちが真剣に向き合わなければならないものでしょう。世界中で企業活動や経済活動が大きな制限を受けることになったこの数カ月、環境汚染の状態が著しく改善されたことが報告されています。大気や海水は澄み渡り、近年実現したことのない清浄な環境が出現することになったのです。

世界中で毎年100万人にも及ぶと言われているのが、環境汚染を原因とする死者数です。この数カ月という期間内の改善によって、中国国内だけでも環境汚染を原因とする死者は大きく減少し、将来にわたる影響を含めて約9万人の生命が救われたとする報告もあります。

何という逆説でしょうか。人間社会に決定的な打撃を与えている新型コロナウイルスは、私たち人間の営みを根本から問い直す呼びかけでもあるということなのです。

内的生活への誘い

新型コロナウイルス感染拡大の下、課せられた外出自粛の日々の中では、私たちは必然的に家に長くとどまる生活を余儀なくされました。1日の大半を家で過ごし、休日も外出を控えなければならない。人と出会い、たくさんの人と関わることが好きな人々、アウトドア派の人々には、どうにもやるせない、退屈な日々となったかもしれません。

しかし、その一方で、私たちは、かつてないほど内なるサイクルを回すことに導かれていると言えるのではないでしょうか。

現代社会は、外世界に様々な結晶化を生み出す外なるサイクルを重視します。外に現れる数字、実績、結果を重んじ、その背後にあるプロセスや原因、動機、目的をあまり重要なものとは認めない傾向があります。しかし、外に向かって広がり続ける人間の営みは、内に向かう営みがあって初めてバランスするものです。結晶化を生み出す外なるサイクルの質は、内なるサイクルが決めていると言っても過言ではないのです。

内なるサイクルに向かう生き方を内的生活と言います。外の刺激に心を向けるのではなく、自分自身の心の営みにエネルギーを向けてゆく生き方です。自分の心に向き合い、心を実感する。心の感じ方を振り返り、想い・考えを耕し直し、新たな願いや志を見出してゆく。心に生まれる想いや考えを中心にそれを成長・進化させ、また、そこに新たな秩序を生み出す──。結果として現れた現実を受けとめ、それをもう1度、心の想い・考えの次元につなぐことも、その1つでしょう。

読書をしながら、また想いや考えの変化を記しながら、内なるサイクルを回し続けることもできます。静かな時間、自分自身と向き合う時間をこれほど十分に与えられていることはなかったのではないでしょうか。それは、心から始める人生の再耕にほかなりません。

自分を知るための「一日一葉」特別セミナー

そして、そうした内的生活に私たちを誘ってくれるのが、今、開講中の「自分を知るための『一日一葉』特別セミナー」です。

拙著『自分を知る力』を主教材とし、このセミナーのためにつくられたガイドブックを手がかりに進められているこのセミナーは、自分自身と向き合う時間を毎日少しずつ積み重ねることを通じて、自分の心の感じ方、動き方、そしてはたらき方を見つめ、育んでゆくことをめざすものです。さらには、そこから新たな人生の願いや目的を見出すこともできるものです。ホームページの会員サイトにある特集ページで、その様子をぜひご覧いただきたいと思います。

2020.05.27