時の羅針盤・187

時の羅針盤・187

自分を信じる

高橋佳子


人生は「生まれたい」という願いから始まった

激動の時代、大変なスピードで変化する社会の中にあって、人生を生きてゆくことは、必ずしも多くの歓びをもたらされるものであるとは限りません。むしろ、それは、苦しいことやつらいことの方が多いかもしれません。

はっきりしていることは、この世界を支配する「崩壊の定」──何もしなければ、ものごとはすべて古び、歪み、錆びつき、壊れてゆくという法則──によって、多くの試練を避けることができないということです。

「こんな人生なら、生まれてこなければよかった──」

数え切れない人々が、そうつぶやいてきたことも事実です。

けれども、少なくとも人生の始まりは、そうではありませんでした。私たちは誰もが、魂の存在として、この世界に生まれてくることを望んでいたのです。なぜなら、人生とは、魂が願いを持つことによって始めることができる歩みだからです。

魂は、生まれてくることによって、現象世界と精神世界、外界と内界を結びつけることができるようになります。

例えば、心に抱いた想いや考えを外に現し、魂に刻まれた願いを具体的に結晶化させることができます。それを通じて、進化成長の歩みを深め続けることができるのです。その経験は、生まれてきたからこそできることであり、現象世界の人生だけに可能となる歩みです。

私たちの人生は、どれ1つ例外なく、どうしても生まれたいという願いから始まったことを信じていただきたいのです。

本当の歓びとは何か

生まれてきたとき、私たち人間は、何をすることもできませんでした。立つことも、歩くことも、話をすることも、外の世界を今できるように見ることさえもできなかったのです。

けれども、多くの人は、時を経ることで、やがて立ち上がり、歩き出し、自由に動き回ることができるようになります。人の話を聞いて理解し、自らが思い考えたことを話して伝えることができるようになります。世界を観察し、それに対する自分の行動を示すことができるようになります。

時が経つにつれて、自らの内にある力を引き出し、様々な生き方を外から吸収して「最初の自分」になってゆくのです。それは、ほとんどの人にとって、気づかぬうちに進んでゆく人生の道程です。

人が生まれながらに抱いている、いわば「生まれながらの力」──。それだけでも、何と素晴らしいことでしょう。その力は、私たちの中で特別な輝きを発しているものです。

しかし、生まれ育ちの中でいつの間にかできあがった「最初の自分」以降、今度は私たちが、それを出発点として、様々な努力を重ねて引き出さなければならない力があります。

それは、気づかぬうちに生まれている力ではなく、自分が自覚し、努力を積み重ね、錬磨を重ねて引き出す心の力──。生まれ育ちだけでは引き出すことができない、人生を「生きる力」です。

その力は、私たちにとって、「生まれながらの力」以上の、唯一無二の輝きを放つものにほかなりません。

なぜなら、その輝きとともに、私たちの本当の自分、「最終形の自分」が現れてくるからです。

「生きる力」を引き出し、新たな自分として生きることこそ、人生の目的を果たすためになくてはならないことです。

私たちがこの現象世界に生まれたならば、この力を引き出し、「次の自分」を生きて、「最終形の自分」に肉迫しなければ、本当の歓び、人生の醍醐味を味わうことはできないと言っても過言ではないのです。

自分を信じる

困難や試練に満ちた人生を生きてゆくことは、大変なことです。でも、そのときこそ、あなた自身を信じてください。

「自分を信じる」とは、今、現れている自分を信じることだけではありません。「最初の自分」の奥に秘められている「最終形の自分」に向かって歩み続ける自分を信じることこそ、「自分を信じる」ということの真義──。「最終形の自分」を引き出す力があなたの中に眠っていることを、忘れないでいただきたいのです。

2019.9.30